同一生計配偶者・控除対象配偶者・源泉控除対象配偶者の違い
「同一生計配偶者」「控除対象配偶者」「源泉控除対象配偶者」の意義と要件についてまとめました。本記事は、令和2年分以降の年末調整書類や確定申告書類を作成する際、參考にしてください。
INDEX
目次
それぞれの意義と要件
同一生計配偶者・控除対象配偶者・源泉控除対象配偶者の區分は、大前提として「使われる場面」や「使われる目的」がそれぞれ異なります。多くの人にとって重要なのは、配偶者控除に直結する「控除対象配偶者」の區分でしょう。
各區分の意義
これらの區分は、それぞれの所得要件に従って、ざっくり下図のようにまとめられます。ただ、そもそも異なる場面・目的で使われる區分なので、スッキリ區別できるわけではありません。ひとりの配偶者が3つすべてに該當する、ということも往々にしてあります。
ここで言う「合計所得金額」については、ひとまず「すべての所得をひっくるめた金額」と考えておきましょう。一般的な會社員や専業の個人事業主など、そもそも1種類の所得しか得ていない人は、その額がそのまま「合計所得金額」になります。(詳細は後述)
なお、所得以外に「あなたと生計を一にする配偶者であること」などという要件も定められています。
「生計を一にする」とは?
「同じ財源で生活している狀態」を指す言葉。同居しているなら、基本的に「生計を一にしている」と考えてよい。なお、生活費を送金していれば、別居でも「生計を一にしている」と認められることがある。
>>「生計を一にする」の実務的な判斷基準
ここからは、各區分の要件などについて詳しく説明していきます。
① 同一生計配偶者あなたに課される要件配偶者に課される要件
なし
上記の要件を満たす配偶者は、あなたの「同一生計配偶者」に該當します。「同一生計配偶者」は、障害者控除や住民稅の減免制度などに関わる區分です。
「同一生計配偶者」が関係する主な稅制障害者控除
同一生計配偶者が障害者なら、あなたは障害者控除を受けられる
住民稅の免除
同一生計配偶者がいると、あなたは住民稅の非課稅限度額が高くなる(住民稅を免除されるハードルが下がる)
住民稅の軽減*
誰かの同一生計配偶者に該當する人は、市區町村民稅の均等割が軽減される
* 軽減制度がない自治體もある
単純に「配偶者が同一生計配偶者に該當する」というだけでは、稅金に影響が出ない場合も多いです。「同一生計配偶者」は扶養親族と似た概念で、ごく簡単に言えば、ひとまず「この人が養ってますよ」と示すための區分に過ぎません。
「同一生計配偶者」について記入する書類の例會社員の場合個人事業主などの場合
給與所得者の扶養控除等(異動)申告書
確定申告書(第二表)
會社員が會社に提出する「扶養控除等(異動)申告書」には、“障害者に該當する”同一生計配偶者の情報を記入します。ここで、あなたの同一生計配偶者が障害者であることを申告すると、あなたの給與や賞與から源泉徴収される稅額が軽減されます。
確定申告書では、第二表に配偶者の情報を記入する欄があります。右のほうにある「同一」の項目は、あなたの配偶者が「同一生計配偶者」で、かつ、あなたの合計所得が「1,000萬円超」のときだけ◯をつけます。
② 控除対象配偶者あなたに課される要件配偶者に課される要件
あなたと配偶者が上記の要件を満たせば、あなたの配偶者は「控除対象配偶者」に該當します。「控除対象配偶者」とは、簡単に言うと「配偶者控除の対象となる配偶者」を指す言葉です。
「控除対象配偶者」には、「配偶者“特別”控除の要件を満たす配偶者」は含まれない。「配偶者控除」と「配偶者特別控除」は、書類上では「配偶者(特別)控除」のように一括して記載されることも多いが、控除対象配偶者の判定においては區別する必要がある。
「控除対象配偶者」が関係する主な稅制配偶者控除
配偶者が「控除対象配偶者」に該當するとき、あなたは配偶者控除を受けられる(控除額は、あなたの所得や配偶者の年齢によって異なる)
ちなみに「老人控除対象配偶者」という言葉もありますが、これは「70歳以上の控除対象配偶者」を指す區分です。配偶者が「老人控除対象配偶者」に該當すると、配偶者控除の控除額がアップします。
「控除対象配偶者」について記入する書類の例會社員の場合個人事業主などの場合
給與所得者の配偶者控除等申告書
確定申告書(第二表)
年末調整の際、會社員は會社に「配偶者控除等申告書」を提出します。この書類で「私の配偶者の所得は〇〇円なので、配偶者控除を適用してください」と申告するわけです。令和2年分以降は、基礎控除と所得金額調整控除の申告を兼ねた様式になっています。
確定申告書では、第二表に配偶者の情報を記入する欄があります。「同一」の欄は、あなたの所得が1,000萬円以下であれば◯をつけません。ここに◯をつけるのは「控除対象配偶者に該當しない同一生計配偶者」だけです。
③ 源泉控除対象配偶者あなたに課される要件配偶者に課される要件
あなたと配偶者が上記の要件を満たせば、あなたの配偶者は「源泉控除対象配偶者」に該當します。「源泉控除対象配偶者」は、給與や賞與(ボーナス)の源泉徴収において「扶養親族等」の1人としてカウントされます。
「源泉控除対象配偶者」が関係する主な稅制給與・賞與の源泉徴収
配偶者が「源泉控除対象配偶者」に該當するとき、あなたは給與や賞與から源泉徴収される稅額が軽減される
會社は、下図のような「源泉徴収稅額表」を參考に、従業員の給與や賞與から所得稅を天引きしています。上部にある「扶養親族等の數」が多いと、源泉徴収される金額が下がる仕組みです。
配偶者が「源泉控除対象配偶者」に該當すると、この「扶養親族等の數」が1人分増えます。これにより、あなたの給與や賞與から源泉徴収される金額が減るのです。
「源泉控除対象配偶者」について記入する書類の例會社員の場合個人事業主などの場合
給與所得者の扶養控除等(異動)申告書
特になし
給與所得者が會社に提出する「扶養控除等(異動)申告書」には、源泉控除対象配偶者の個人情報や、所得の見積額を記入する欄があります。ここで「配偶者の所得が95萬円以下になりそうなので、源泉徴収の際に考慮してください」と申告するわけです。
「給與所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、その年の「最初の給與の支払を受ける日の前日」までに提出することが定められている。會社によっては年末調整の際に渡されるケースもあるが、その場合は「翌年分」であることが多い。
ちなみに、源泉控除対象配偶者の要件は、「配偶者控除」および「控除額38萬円の配偶者特別控除」の要件と一緻します。したがって、源泉控除対象配偶者がいる人は、所得の見積額と実態が大きく変わらない限り、年末調整で配偶者控除か配偶者特別控除を受けられます。
【補足】合計所得金額の考え方
前述したように、そもそも1種類の所得(給與所得や事業所得)しか得ていない人は、その金額をそのまま「合計所得金額」と考えてOKです。
給與所得の金額は、2つの會社に勤めていたりしない限り、會社から受け取る「源泉徴収票」で確認できます。
複數の所得があるときの考え方
複數の所得を得ている人は、「合計所得金額」の計算が複雑になる場合もあります。具體的には、下記のような流れで計算しなくてはなりません。
「損益通算」とは、一定のルールに従って「黒字の所得」から「赤字の所得」を差し引く処理のことです。たとえば、事業所得が250萬円の黒字でも、不動産所得で100萬円の赤字がある場合、合計所得金額は150萬円(250萬円 - 100萬円)になります。
合計所得金額の考え方について詳しく
まとめ – 各區分の所得要件一覧
同一生計配偶者・控除対象配偶者・源泉控除対象配偶者の3つは、どれも異なる場面・目的で使われる區分です。まずは各區分の意義を理解しておきましょう。
同一生計配偶者
障害者控除や住民稅の減免制度などに関わる區分
配偶者が「同一生計配偶者」に該當しても、あなたの稅金に影響が出るとは限らない
控除対象配偶者
配偶者控除の対象者を示す際に用いられる區分
配偶者が「控除対象配偶者」に該當すると、あなたは配偶者控除を受けられる
源泉控除対象配偶者
源泉徴収稅額の計算において用いられる區分
配偶者が「源泉控除対象配偶者」に該當すると、あなたは給與や賞與から源泉徴収される稅額が減る
各區分の所得要件についても、混同しやすいので注意が必要です。「あなたの所得に課される要件」と「配偶者の所得に課される要件」を、それぞれ以下にまとめました。
各區分の所得要件あなたの所得配偶者の所得
同一生計配偶者
要件なし
合計所得金額48萬円以下
給與のみ:年収103萬円以下
控除対象配偶者
合計所得金額1,000萬円以下
給與のみ:年収1,195萬円以下
合計所得金額48萬円以下
給與のみ:年収103萬円以下
源泉控除対象配偶者
合計所得金額900萬円以下
給與のみ:年収1,095萬円
合計所得金額95萬円以下
給與のみ:年収150萬円以下
なお、上図のとおり「控除対象配偶者」の多くは「同一生計配偶者」と「源泉控除対象配偶者」にも該當します。スッキリ區別できないのでややこしいですが、ひとまず書類等で「〇〇配偶者」という欄があったとき、各區分を混同せずに書ければ問題ありません。
我來說兩句